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4月・5月・6月に残業すると1年間の社会保険料が高くなるってほんと?

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サラリーマンのみなさんが毎月支払っている社会保険料は、毎月もらうお給料の総額で決定されます。4月・5月・6月に残業を多くしてしまうと、1年間支払う保険料が高くなってしまうのはご存じでしょうか?その仕組みをお話していきたいと思います。

給与明細の社会保険料の内訳

最近の若い人たちのなかには、お給料明細を貰っても、封すら開けず「ポイッ」っと、ゴミ箱に入れてしまう人も、いるとか・・・いないとか・・・そんな方もお手元に給与明細を用意していただいて、自分の「社会保険料」がいくら引かれているのか、なぜその金額なのか確認をしてほしいと思います。社会保険料には、5種類あります。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料

労災保険料のみ、全額が会社負担ですので、給与明細には、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・40歳以上65歳未満の方は介護保険料の記載があると思います。健康保険・厚生年金・介護保険料は会社と従業員が半分づつ折半して負担しています。

社会保険料はどうやって決定されるのか?

社会保険料のうち、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の決定の仕方についてお話していきます。

新入社員の場合

新入社員の場合は、月額に支払われると想定される給与の総額を入社時に決定し日本年金機構に届け出をし決定します。

例えば

基本給200,000円
資格手当20,000円
家族手当5,000円
想定される残業代5,000円
通勤手当10,000円
合計240,000円

想定される給料の月額を計算します。計算された金額が、標準報酬月額となります。

この場合、標準報酬月額は240,000円となり、この金額に、各保険料率をかけて、会社と折半なので、半分にして計算していきます。

健康保険料の計算の仕方

令和4年度3月分(4月給与から徴収)東京都の場合=健康保険料率=9.81%

240,000円(標準報酬月額)×健康保険料率9.81%(東京都)÷2(会社と従業員半分づつ負担)

健康保険料は、11,772円となります。

介護保険料の計算の仕方

健康保険料率40歳以上=11.45%ー9.81%=介護保険料率1.64%

240,000円(標準報酬月額)×介護保険料率1.64%(東京都)÷2(会社と従業員半分づつ負担)

介護保険料は、1,968円となります。

厚生年金保険料の計算の仕方

令和4年度3月分(4月給与から徴収)全国一律・厚生年金保険料率=18.3%

240,000円(標準報酬月額)×厚生年金保険料率18.3%(全国一律)÷2(会社と従業員半分づつ負担)

厚生年金保険料は、21、960円となります。

一般従業員の場合の計算方法は?



一般従業員の場合は、4月・5月・6月の給与支給額をもとに、標準報酬月額を決定し、大幅な給与の変更がなければ、9月分保険料(10月の給与で徴収)から変更されます。この手続きは、算定基礎届といい、毎年同時期に、社会保険に加入している全従業員一斉に行われます。

3か月の給与支給額を合計し平均月額を計算します。

4月給与総額220,000円
5月給与総額430,000円
6月給与総額250,000円
3か月合計給与総額900,000円

この場合は、3か月分給与合計額900,000円÷3か月の平均を求めて=300,000円=標準報酬月額は300,000円となります。4月の給与支払額(残業代も含めます)が、22万円で、少なかったとはいえ、3か月の総額の平均を出し、標準報酬月額は決定されます。

東京都の場合を例に各保険料率にあてはめて計算してみます。

  • 健康保険料   30万円×9.81%÷2=14,715円
  • 介護保険料   30万円×1.64%÷2= 2,460円
  • 厚生年金保険料 30万円×18.3%÷2=27,450円

各保険料は、会社が半分負担してくれているため、実質支払総額になると、89,250円もの税金が毎月1名あたり支払われていることになります。

各保険料率の詳細は協会けんぽのホームページに、各都道府県ごとに詳しく早見表になっていますので、計算するのが面倒というかたは、自分の標準報酬月額をもとめて、表にあてはめてみましょう。

令和4年度保険料額表(令和4年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

インセンティブ制度で各都道府県の保険料が違うって知ってますか?

さきほどは、東京都の場合をもとに計算しましたが、健康保険料、介護保険料は、協会けんぽで、平成30年度から始まっている「インセンティブ(報奨金)制度」の導入によって、都道府県ごとに、順位付けされ、保険料率が違います。各都道府県での医療費支出の違いや、健康意識の高さなどにより、ランキング付けされて料率が決まり、保険料が安かったり、高かったりしているんです。令和4年度は、令和2年度の実績をもとに算定されています。

例えば

健康保険料率トップ  新潟県 9.51%  標準報酬月額30万円で14,265円

健康保険料率ワースト 佐賀県  11%  標準報酬月額30万円で16,500円  

保険料率は全国一律かと思っていたかたが、多いかと思いますが、高いところと安いところの差額は、月額2,235円も違うんです。

このインセンティブ制度は、都道府県全体での

  • 健診の受診率を高める
  • 保健指導の実施率
  • 保健指導対象者の減少率
  • 要治療者の医療機関受診率
  • ジェネリック医薬品の使用割合

などなど、1人ひとりの積み重ねにより、健康意識の高い都道府県の健康保険料が安くなる構造になっています。

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4月・5月・6月に残業をすると社会保険料が高くなる仕組み

社会保険料の決定方法は、4月・5月・6月の3か月分の給与の総額を平均し1か月分の給与を計算し、その額が標準報酬月額となります。

4月には昇給がある会社が多いと思います。4月、5月は新人の育成や決算などにより残業が増える時期でもあります。社会保険料算定は、給与の支払額が多めになる時期にめがけて、算定されるのです。

新入社員も4月の入社時に想定した標準報酬月額も、4・5・6月の3か月に実際支払われた給与により、再度、標準報酬月額を計算するため、想定ではなく、正確な保険料の徴収ができるのです。

この4・5・6月の給料をもとに決定した保険料は、10月に始まり、大きな固定給の変動がなければ、翌年の9月まで続きます。7月に残業代が極端に減ったからといって、標準報酬月額の変更はできません。残業代や夜勤手当などは、固定給とはならないため、変動しても標準報酬月額には影響しないのです。

あくまでも、固定給(基本給・家族手当・通勤手当など月額固定的に支払われる賃金)が変動しなければ、標準報酬月額の変更はありません。変動も保険料額表で2段階以上の大幅な変更がされなければ、標準報酬月額の変更はありません。

4・5・6月に繁忙期のため、残業をたくさんしてしまい、その月の給料は多くなったとしても、通常営業にもどり、残業の少なくなった10月頃、いきなり高額の社会保険料の徴収がはじまるのです。

いままで支払っていた保険料との差が大きなものでなければ、概ね9月分保険料から(10月給与徴収以降の保険料)、2~4万円以上の大幅な基本給の変動の場合(保険料額表の2段階以上変更)は、7月分保険料(8月給与徴収分保険料)から徴収される保険料が、驚きの高さになっていることがあるのです。



計算方法さえわかれば、保険料も怖くない

いままで、なんとなく支払っていた社会保険料も、計算の仕方さえ理解していれば、10月の給料明細を見て、「えっ!どうして、こんなに保険料が上がったのかしら?」なんて事態にならなくてすみます。毎年料率の変わる、健康保険料率と、介護保険料率と、18.3%の厚生年金保険料の料率の把握をして、自分と会社と折半にするだけで、4・5・6月の給与が確定する段階で、10月から徴収される社会保険料の金額は、おおむね予測ができます。

会社から命ぜられる残業を、あえて4月、5月、6月に極端に減らすことは難しいかもしれません。経営者側も負担額が減ることを考えると、あえて、7月以降に残業を多くする振り分けは、支出を減らすひとつの方法として考えても良いのではないかな?とも思います。

給与の額が大幅に増えたり減った場合は、10月の改定を待たずに、保険料の改定が行われる場合がありますが、計算方法さえ理解していれば、保険料を抑えながら仕事をすることも可能だということを覚えておきましょう。